国民一人一人が出来ることから始めよう 第2回遺骨収集シンポジウム(産経新聞)

 先の大戦で海外で亡くなった戦没者の遺骨収集問題は、この1年間で大きく動いた。アルピニストの野口健さん(36)らが参加し、フィリピンで活動するNPO法人「空援隊(くうえんたい)」は昨年、従来の実績を大きく上回る8675体分の遺骨を収集した。だが、同時に資金面などさまざまな課題も噴出。19日に大阪市北区の市中央公会堂で開かれた遺骨収集を考えるシンポジウム(産経新聞社主催)で、野口さんは「国が動くのを待っているのではなく、おのおのができることから始めよう」と呼びかけた。(喜多由浩)

 ◆首相の無味乾燥な文章

 シンポジウムは昨年8月の東京・靖国会館に次いで2回目。パネリストとして、ほかにジャーナリストの笹幸恵(ゆきえ)さん(35)、空援隊理事・事務局長の倉田宇山(うさん)さん(53)が出席。約1000人の観客を前に、現状や新たな課題について活発な意見交換が行われた。

 海外で亡くなった戦没者約240万人のうち、未帰還の遺骨は約115万体。空援隊はフィリピンで現地住民の情報を中心とした独自のネットワークを構築し、昨年、従来とは“ふたケタも違う”大きな成果を上げた。さらに、国の予算さえ付けば「総計約3万体分の収集が可能」として鳩山由紀夫首相あてに公開質問状を提出したが、明確な回答は得られていない。

 野口さんは「鳩山政権は『脱官僚』をうたっているのだから、政治家の“思い”が込められている回答があって然るべき。だが、届いたのは明らかに官僚が書いた(無味乾燥な)文章だった。『遺骨収集は国家の義務である』という法律がないから、国家の責任の所在が明確にならないのではないか」と訴えた。

 ◆一段上の努力必要

 昨年11月には、フィリピンに派遣された日本政府の派遣団の活動をめぐり、現地の自治体などから遺骨収集や焼骨(検疫や輸送の際の重量を減らすために現地で遺骨を焼くこと)の許可に関してさまざまな“横やり”が入り、収集した遺骨がマニラの日本大使館の倉庫で約2週間足止めになったこともあった。

 現地にいた倉田さんは「現地の自治体関係者からは『日本からODA(政府開発援助)が来ないから遺骨収集もさせない』という話も聞いた。何の関係もない話(ODA)が遺骨収集と結びつけられている」と憤りをあらわにする。収集量が飛躍的に増えたため、保管場所や日本への輸送問題も新たな課題として浮かび上がってきた。

 また、この問題への関心が高まってきたとはいえ、国民運動にするにはもう一段上の努力が必要だ。

 笹さんは「国民一人一人が『思い』を持って行動しなければ事態は変わらない。知恵がある人は知恵を、お金がある人はお金を、どちらもない人は自分の身体で貢献していただきたい。一番大事なことは国民の皆さんが関心を持ち続けること」と呼びかけ、会場からは大きな拍手が沸き上がった。

                   ◇

 ■遺骨収集をめぐる最近の動き

 「空援隊」がフィリピンで実績を上げたことを受け、遺骨収集事業を所管する厚生労働省は昨年、同国に限り、民間団体に収集事業を委託して行う方法を導入した。国の予算も増加傾向にあるが、確認されたすべての遺骨を収集するには十分な額ではないとされる。民主、自民両党内には有志の議員が勉強会を開いたり、国家の義務を明確化するための議員立法を行ったりする動きもあるが、具体的な形にはなっていない。一方で国民の関心は高まっており、これまでこの問題をほとんど扱ってこなかったメディアの報道も相次いでいる。

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